不倫慰謝料を請求されたときに言い値を払ってはいけない7つの理由
不倫慰謝料を請求されると、「自分が悪いのだから、言われたとおりに払わないといけない」と考えてしまう方がいます。
しかし現実には,弁護士への依頼を通じて,「相手の言い値を払う必要はない」ケースがほとんどといっても過言ではありません。
今回は不倫慰謝料を請求されたときに、相手の言い値をそのまま払ってはいけない理由をお伝えします。
浮気して慰謝料請求をされお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
不倫・浮気慰謝料請求で相手の言い値を払ってはいけない理由
不倫をして相手の配偶者から慰謝料請求されたときには、弁護士代理人を突ける場合は,相手の言い値をそのまま支払うべきではありません。
理由は以下の7つです。
- 相手が過大な請求をしているケースが多いから
- 交渉すると減額されるケースが多いから
- 時効が成立している可能性があるから
- 不倫が始まったとき、すでに夫婦関係が破綻していた可能性があるから
- 相手が証拠を持っていない可能性があるから
- 肉体関係がなければ慰謝料を払わなくて良いから
- 肉体関係を強要されたら慰謝料を払わなくて良いから
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。もっとも,これらは弁護士がいないと主張し辛い事柄であるかもしれません。
1.相手が過大な請求をしているケースが多い
不倫の慰謝料請求をされたとき、相手の請求額は不倫慰謝料の相場の金額より高額になっているケースが多々あります。
実際、相手夫婦が離婚する場合の不倫慰謝料の相場は100万~300万円程度、相手夫婦が離婚しない場合の不倫慰謝料の相場は100万円以下の可能性があります。
ところが慰謝料請求するときには、500万円や1000万円などの高額な請求をされるケースが珍しくありません。夫婦が離婚しない場合でも300万円や500万円の請求をされるケースがあります。
裁判をされても相場より高額な支払い命令は出ないので、弁護士に依頼する場合,このような高額な金額を払う必要はありません。
2.交渉すると減額されるケースが多い
不倫慰謝料請求をされたときに言い値を払ってはいけない理由の2つ目は「弁護士を通じて交渉すると慰謝料額が減額される可能性が高いから」です。
相手の方も減額交渉されることを予想して、実際に支払ってほしい金額より多少高めに請求しているケースが多いのが現実です。
たとえば相手が「200万円の支払いを受けたい」と考えている場合、当初は300万円程度を請求するケースなどがあります。
こういった事案なら、不倫した側が交渉すると比較的簡単に200万円まで支払金額を下げられる場合があるかもしれません。
また相場より高額な請求をされた場合には相場程度にまでは下がるのが通常です。
相場とおりの金額であっても、慰謝料を支払う側に資力がなかったら支払金額を減額できる可能性が高いといえます。
慰謝料請求をされたら、言い値を支払うのではなく弁護士を通じて減額交渉しましょう。
お金がなければ払わなくて良いケースもある
慰謝料請求された側に収入も資産もない場合には慰謝料を大きく減額できる可能性が高く、状況によっては払わなくて済むケースもあります。
こちらが慰謝料を払わないと、相手は訴訟を起こして給料や預貯金等を差し押さえなければなりません。しかし差し押さえるものがない人からは回収ができません。それであれば、訴訟を起こさずに減額して支払ってもらった方が相手にとっても得になります。
また相手夫婦が復縁する場合には「不倫関係を解消すること」を条件に慰謝料を免除してもらえるケースもあるかもしれません。
お金がない場合には、相手に状況を伝えて「どうしても払えない」と交渉してみましょう。こうした場合にも弁護士がいた方が交渉がスムースに進むことが多いでしょう。
数百万円の慰謝料でも数十万円程度に抑えられる可能性がありますし、慰謝料を支払わなくて済む可能性もあります。
3.時効が成立している可能性がある
不倫慰謝料には時効が適用されます。時効が成立したら、慰謝料を支払う義務はありません。
不倫慰謝料の時効が成立するのは以下の期間が経過した場合です。
- 請求者が不倫の事実と不倫相手を知ってから3年が経過した
- 不倫から20年が経過した
通常は①のパターンの時効を主張するケースが多いでしょう。もっとも,時効の援用は弁護士に相談して行われる方が多いのではないかと考えられます。
メルクマールとして「不倫を解消してから3年」以上が経過していたら、慰謝料の時効が成立している可能性があります。
時効の援用が必要
不倫慰謝料の時効が成立しても、何もしなければ相手の慰謝料請求権は消滅しません。
慰謝料請求権を時効にかからせるには「時効の援用」が必要です。時効の援用とは「時効による利益を受けます」という意思表示です。時効の援用は弁護士に相談されることをおすすめいたします。
具体的には請求者に対し「時効を援用します」と告げれば援用ができます。援用した証拠を残すため、内容証明郵便で時効援用通知書を送りましょう。書き方がわからない場合には弁護士までご相談ください。
4.不倫が始まったとき、すでに夫婦関係が破綻していた可能性がある
不倫が始まったときにすでに相手方夫婦の関係が破綻していたら、慰謝料を払う必要はありません。もっとも、婚姻破綻の判断は容易ではありませんので,弁護士に相談することをすすめます。
不倫の慰謝料が発生するのは、不倫によって相手の配偶者に大きな精神的苦痛を与えたためです。不倫が始まったときにすでに夫婦関係が破綻していたら、不倫が行われても配偶者はさほどの精神的苦痛を受けません。
よって慰謝料が発生せず、支払いは不要となるのです。たとえば以下のような場合、慰謝料の支払いを断れる可能性が高くなります。
- 不倫が始まったとき、相手夫婦が別居していた
- 不倫が始まったとき、相手夫婦が離婚調停中だった、離婚裁判の最中だった
家庭内別居や離婚調停はしていないけれど不仲だった場合、慰謝料を完全には拒否できなくても減額できる可能性が高くなります。
いずれにせよ、相手の言い値を払うのではなく減額交渉しましょう。
5.相手が証拠を持っていない可能性がある
不倫慰謝料を請求されたとき、相手が証拠を持っているかどうかも重要です。
不倫(肉体関係)の証拠を持っていなければ、相手が裁判を起こしても慰謝料の支払い命令が出ない可能性があります。
極端な話をすると、相手の請求を完全に無視していても慰謝料の取り立てが行われるリスクが発生しないのです(ただし無視するとトラブルが大きくなるので、現実的にはきちんと対応しましょう)。
交渉によって慰謝料請求をあきらめさせられるケースもよくあります。
特に以下のような場合、相手が証拠を持っていない可能性があるので簡単に不倫を認めてしまわないように注意しましょう。ただし,交渉上,事実でないことを述べることはすすめられません。
- 相手の送ってきた慰謝料請求書に具体的な不倫の時期や事実関係が一切書かれていない
いつ頃からいつ頃まで不倫していたのか、いつ会っていたのかなど具体的な状況が全く書かれておらず、単に「不倫していた」とだけ書かれている場合です。相手が推測しているにすぎない可能性があります。
- 相手の送ってきた慰謝料請求書に書いてある不倫の時期や事実関係が間違っている
事実関係が大きく間違っている場合、相手が単に推測しているだけの可能性があります。
6.肉体関係がなければ慰謝料を払わなくて良い
不倫の慰謝料を請求されても、肉体関係がなければ支払いをする必要はありません。
法律上、不倫のことを「不貞」といいますが、不貞が成立するには「男女の肉体関係」が必要だからです。
肉体関係がなければ基本的に慰謝料の支払義務が発生しません。
自分では「浮気、不倫してしまった」と思っていても、不倫相手との交際の進展状況でまだ肉体関係を持っていないなら、慰謝料支払いをはっきり断りましょう。
相手はLINEのやり取りなどを見て「浮気している」と思いこんでいる可能性がありますが「肉体関係がないので慰謝料支払義務までは発生しない」と明確に伝えるべきです。
自分で言っても聞く耳を持ってくれないなど、困ったときには弁護士へ相談しましょう。
7.肉体関係を強要されたら慰謝料を払わなくて良い
相手の配偶者と肉体関係を持ったとしても、その関係が強要されたものであれば慰謝料を払う必要はありません。こうした被害に遭った場合は弁護士に相談するのが良いでしょう。
不倫によって慰謝料支払義務が発生するには、あくまで不倫した当事者に故意や過失が必要だからです。たとえば暴行や脅迫によって肉体関係を強要されたら強制性交等罪(昔の強姦罪)の被害者であり、故意も過失もありません。むしろ強要した相手方へ慰謝料を請求すべきです。
暴行や脅迫が行われていない場合でも、セクハラされたケースで事実上性関係を断れない状況に追い込まれた場合などには慰謝料支払いをしなくて良い可能性があります。
肉体関係を強要された場合の対応は、非常にデリケートで複雑です。その方のお考えや具体的な状況に応じてさまざまな対処を検討しなければなりません。
1人で抱え込まず、困ったときには弁護士までご相談ください。
8.慰謝料請求されたときの対処方法
不倫の慰謝料請求をされたら、以下のように対応しましょう。
8-1.慰謝料の相場を調べる
まずは不倫慰謝料の相場を調べるべきです。相手の請求額が相場を越えていたら、少なくとも相場までは減額させましょう。
【不倫慰謝料の相場】
相手が離婚する場合
相手夫婦の婚姻年数 |
慰謝料の相場 |
婚姻年数が1~3年程度 |
100~150万円程度 |
婚姻年数が3~10年程度 |
150~300万円程度 |
婚姻年数が10年以上 |
300万円程度またはそれ以上 |
相手が離婚しない、復縁する場合
慰謝料の相場は100万円以下になる可能性があります。
くれぐれも相場を超える高額な慰謝料を簡単に払ってしまわないよう弁護士に相談して注意してください。
8-2.減額交渉する
相手から不倫慰謝料を請求されたら、相場通りであっても相場と違っていても、減額交渉をしましょう。相手の態度が強硬にみえても、こちらが粘り強く交渉すると減額に応じるケースが多々あります。
自分で減額を要求すると相手が感情的になる場合、弁護士に交渉を任せるとお互いが冷静になって効果的に減額できる可能性があります。
8-3.分割払いの交渉も可能
相手夫婦が離婚する場合で慰謝料の相場が高額になる事案などでは、一括で慰謝料を支払うのが難しい場合も多々あります。
そんなときには分割払いの交渉を持ちかけましょう。
たとえば200万円の慰謝料であっても月5万円ずつの分割払いであれば支払える方が多いでしょう。
相手としても、訴訟を起こして労力や費用をかけるよりは、分割払いでも支払いを受けたい、と考えるケースがよくあります。
8-4.借金して慰謝料を払ってはいけない
「お金がなくて慰謝料を払えない」と言うと、相手から「カードローンなどで借金して慰謝料を払うように」と迫られるケースが少なくありません。
しかし慰謝料を払うためにカードローンやキャッシングを利用すべきではありません。
そもそも借金するかどうかは本人が自由に決められるのであり、相手が強要できることではないのです。借り入れを強要すると「強要罪」や「恐喝罪」などの犯罪が成立する可能性もあります。
カードローンなどを利用すると高額な利息も発生するので、自分の首を絞めてしまうでしょう。カードローンやキャッシングを利用せず、相手へ直接の分割払いを求めるのが得策です。
8-5,公正証書を求められたときの対処方法
慰謝料の支払いをするとき、相手から公正証書の作成に協力するよう言われるケースもよくあります。
しかし公正証書を作成すると、支払いをしないときに給料や預貯金などを差し押さえられる可能性があるので、安易に応じない方が良いでしょう。
ただ相手がどうしても公正証書化を求めるなら、応じざるを得ない状況も考えられます。その場合、公正証書作成の費用は相手に負担を求めるとともに、公正証書作成に協力する引き換えに慰謝料のさらなる減額を行うよう提案してみると良いでしょう。
まとめ
慰謝料請求をされたときの最適な対応は状況によって異なります。自己判断すると不利益を受ける可能性もあるので、弁護士という法律の専門家の知恵を利用しましょう。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では不倫慰謝料のトラブルに力を入れて取り組んでいます。慰謝料請求の代理交渉も承りますので、慰謝料請求されてお困りの場合にはお早めにご相談ください。