不貞相手への慰謝料と時効,請求方法の法律相談
パートナーが不倫した場合、不倫したパートナー本人だけではなく不倫相手にも慰謝料請求ができます。
不倫相手に対する慰謝料の金額やパートナーの責任と不倫相手の責任の関係など、知識をもって対応しましょう。
また不倫慰謝料には時効もあるので、成立してしまわないように注意が必要です。
今回は不倫相手に対する慰謝料や時効、相場、請求方法について弁護士が解説します。
夫や妻に不倫されてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
1.不倫相手(不貞相手)に対する慰謝料
配偶者が「不貞行為」をした場合には、不貞相手に慰謝料を請求できます。
不貞とは、配偶者のある人が配偶者以外の人と肉体関係を持つことを意味します。
パートナー以外の異性と肉体関係を持つことはパートナーへの重大な裏切り行為となるので、不法行為が成立します。そこで裏切られた配偶者はパートナーと不貞相手の両方へ慰謝料を請求できるのです。
不貞相手に対する慰謝料請求は最高裁の判例によっても認められています(最二小判昭和54年3月30日)。
1-1.子どもから不貞相手に対する慰謝料請求
不貞相手に対する慰謝料請求は、裏切られた配偶者からだけではなく子どもからの請求も認められる可能性があります。
ただし子どもからの慰謝料請求は必ず認められるとは限りません。親が不貞したからといって、必ずしも子どもの養育に支障をきたすとは限らないためです。否定されている裁判例もあるのでケースバイケースの判断が必要と考えましょう。迷ったときには弁護士へご相談ください。
1-2.不貞を証明するには「肉体関係の証拠」が必要
不貞されたときに不貞相手に慰謝料を請求するには、パートナーと不貞相手の「肉体関係」を示す証拠が必要です。
証拠不足の状態で訴訟を提起しても不貞相手に対する慰謝料支払い命令を出してもらえないケースがほとんどだからです。
不貞相手に慰謝料を払わせたいなら、必ず肉体関係を示せる証拠をしっかり集めておきましょう。
2.不倫相手の慰謝料の相場
不倫相手に慰謝料請求できる場合、金額としてはどの程度となるのでしょうか?
不貞の慰謝料額については、パートナーに対するものも不貞相手に対するものも同じです。
だいたい100~300万円程度と考えましょう。
この点について、平均額としては216万円とする報告もあります(不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題 安西二郎)。
また東京地裁における2015年10月から2016年9月までの1年で言い渡された判決の分析結果では、不貞慰謝料の認容額の中央値は150万円とされています(不貞慰謝料に関する分析(1) 大塚正之)。
不貞慰謝料が高額になる条件
不貞慰謝料の額が比較的高額になりやすいのは以下のようなケースです。
- 婚姻期間が長い
- 不貞の期間が長い、回数が多い
- 不貞相手が積極的であった
- 不貞相手は職場でパートナーの上司だった
- 未成年の子どもがいる、子どもの人数が多い
- 裏切られた配偶者がうつ病などの病気になった
3.不倫相手とパートナーの責任との関係
不倫されたら、不倫相手とパートナーの両方へ慰謝料を請求できます。2人の不法行為は「共同不法行為」となるためです。
するとパートナーと不倫相手の責任は「連帯責任」となるので、どちらにいくら請求してもかまいません。不倫相手に全額請求しても「私は半分しか支払いません」などと抗弁されることはありません。
4.婚姻関係破綻後に不倫した場合の慰謝料
不倫相手に対する慰謝料請求が認められるには「婚姻関係が破綻する前の不倫」でなければならないと考えられています。
不倫が不法行為になるのは、不倫によって夫婦関係が破綻に追い込まれたためだからです。
不倫前から婚姻関係が破綻していたら、不倫されても配偶者は大きな精神的苦痛を受けません。違法性もなく損害が発生せず、不法行為が成立しないと考えられます。
そこで、すでに夫婦関係が破綻して別居した後に不倫がはじまった場合などには、不倫相手に慰謝料を請求できないと考えられているのです。
判例でも「不倫開始時にすでに婚姻関係が破綻していた場合には原則として保護すべき法的利益が存在しない」と判断されています(最三小判平成8年3月26日)。
なお家庭内別居の場合には完全に夫婦関係が破綻したわけではないので、家庭内別居状態で不倫が始まったときには慰謝料請求が認められるケースが多数です。
ただしケースによっては夫婦関係が破綻していると認定される可能性もあります(岡山地裁平成17年4月26日など)。
家庭内別居で夫婦関係が破綻しているかどうかについては、ケースバイケースで慎重な判断を要求されるので、わからないときには弁護士までご相談ください。
5.慰謝料の時効
不倫慰謝料の請求権には「時効」が適用されます。
時効の期間は不倫相手に対する慰謝料とパートナーに対する慰謝料で異なる可能性があります。以下でそれぞれについてみていきましょう。
5-1.不倫相手に対する慰謝料の時効
不倫相手に対する慰謝料の時効は、「不貞行為と加害者(不倫相手)を知ったときから3年」です。この場合の慰謝料は「不倫慰謝料」です。
不倫慰謝料には3年の時効が適用されるので、不倫に気づきながらも長期にわたって不倫相手に慰謝料を請求しなかった場合、慰謝料請求権が時効にかかって請求できなくなると考えましょう。慰謝料請求は、なるべく早めに行うべきです。
ただし不倫相手が誰かわからない状態では時効の期間が進行しません。
調査により、氏名や住所などがわかってから3年の時効が進行を開始します。
相手方不明な状態が続いているなら時間が経過していても慰謝料を請求できる可能性があるので、あきらめずに調査するところから始めるのが良いでしょう。
5-2.パートナーに対する慰謝料の時効
パートナーには不倫慰謝料のほか「離婚慰謝料」を請求できます。
不倫慰謝料の時効は不貞相手に対するものと同様ですが、離婚慰謝料についてはより長い期間、請求できる可能性もあります。
離婚慰謝料とは、離婚に至らしめられたことに対する慰謝料です。
パートナーの不倫によって離婚を余儀なくされると被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、パートナーへ離婚慰謝料を請求できます。
なお不倫相手と離婚するわけではないので、不倫相手には離婚慰謝料を請求できません。この点は裁判例でも明らかにされています。
離婚慰謝料の時効
離婚慰謝料の時効は「離婚成立時から3年」です。
配偶者と離婚してから3年間は配偶者に対する慰謝料請求が可能です。
不倫慰謝料と離婚慰謝料の時効は異なるケースも多い
離婚慰謝料と不倫慰謝料の時効期間は異なります。
たとえば不倫されてから10年後に離婚した場合、不倫相手に対する不倫慰謝料はすでに時効にかかっているでしょう。一方配偶者には離婚後3年間であれば慰謝料を請求できます。なお,離婚慰謝料は,不倫相手には原則として請求できないものと解されているので,不倫慰謝料を請求することになります。
一方、不倫されて離婚したけれども不倫相手が不明な状態が続いていて4年が経過したときに判明したとします。この場合、不倫相手に対する慰謝料請求は可能ですが元配偶者には慰謝料を請求できません。
このように、不倫相手と離婚慰謝料の時効は必ずしも一致せず、パートナーと不倫相手のどちらかに請求できるけれどもどちらかには請求できない、といった状態になるケースもよくあります。
時効について判断に迷ったときには弁護士までご相談ください。
6.不倫慰謝料の請求手順
不倫相手やパートナーへ不貞の慰謝料を請求する手順を解説します。
不倫相手にのみ慰謝料請求する場合、パートナーと不倫相手の両方に請求する場合、離婚後に請求する場合の3パターンに分けてみていきましょう。
6-1,不倫相手のみに請求する場合
不倫相手にのみ慰謝料を請求するなら、以下のように対応するのがおすすめです。
STEP1 内容証明郵便で慰謝料を請求する
まずは不倫相手に対し、内容証明郵便を使って慰謝料の請求書を送りましょう。
内容証明郵便を使うと、相手に強いプレッシャーを与えられるメリットがあります。
また請求書を送ったという証拠も残せます。
STEP2 交渉する
不倫相手と慰謝料についての交渉を行い、支払金額や支払い方法を取り決めましょう。
STEP3 合意する
両者で合意ができたら慰謝料に関する合意書を作成します。分割払いにするなら公正証書にするのがおすすめです。
STEP4 合意できなければ訴訟を提起する
話し合っても合意できない場合には、不倫相手に慰謝料請求訴訟を提起しましょう。
提訴先の裁判所は「地方裁判所」または「簡易裁判所」です。
勝訴すれば裁判所が不倫相手へ慰謝料の支払い命令を出してくれます。
6-2,不倫相手とパートナーの両方へ請求する場合
STEP1 内容証明郵便で慰謝料の請求書を送る
不倫相手とパートナーの両方へ慰謝料請求する場合には、不倫相手とパートナーの両方へ内容証明郵便で慰謝料の請求書を送りましょう。
パートナーに対しては慰謝料だけではなく離婚を希望している旨も伝えるとよいでしょう。
STEP2 交渉する
パートナーおよび不倫相手と交渉をします。
STEP3 合意する
離婚条件や慰謝料の支払い額、支払い方法などについて合意ができたら3者間での合意書を作成しましょう。そのうえでパートナーと不倫相手から慰謝料の支払いを受けます。
パートナーとは離婚条件も取り決めて離婚公正証書を作成し、離婚届を提出しましょう。
STEP4 合意できなければ離婚調停を申し立てる
話し合っても合意できない場合、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。
パートナーと不倫相手の両方を調停の相手方として話し合いができます。
STEP5 調停が不成立になったら離婚訴訟を提起する
調停が不成立になったら、離婚訴訟を提起しましょう。
パートナーと不倫相手の両方を訴訟の被告にできます。
証拠によって不貞を立証できれば、裁判所が被告2名に対して慰謝料の支払い命令を出してくれます。
6-3.離婚後に不倫相手とパートナーへ請求する場合
STEP1 内容証明郵便で慰謝料の請求書を送る
離婚後に不倫相手と元パートナーの2名に慰謝料請求するなら、まずは2名に対して内容証明郵便で慰謝料を請求しましょう。
STEP2 交渉する
相手方らと慰謝料の支払額や支払い方法について協議します。
STEP3 合意する
合意ができたら合意書を作成して慰謝料の支払いを受けましょう。分割払いにするなら公正証書にするようおすすめします。
STEP4 合意できなければ慰謝料請求訴訟を提起する
合意できない場合には、地方裁判所で慰謝料請求訴訟を提起します。被告を2名としてパートナーと不倫相手の両方に慰謝料を請求できます。
不貞行為を立証できれば裁判所が相手方らに対して慰謝料の支払い命令を出してくれます。
不倫問題は弁護士へ相談を
不倫相手やパートナーに対する慰謝料請求の手順は複雑になるケースも多く、証拠集めにも神経を使う必要があります。迷ったときには弁護士のサポートを受けましょう。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では不倫や離婚のトラブル解決に力を入れていますので、お気軽にご相談ください。