不倫された人が離婚調停を申し立てる方法や注意点
「不倫されたので離婚調停を申し立てたいのですが、どのようなことに注意すべきでしょうか?」
「不倫の証拠がなくても離婚調停ができますか?」
こういったご相談を受けるケースがよくあります。
相手の不倫を理由とした離婚調停の申立はできます。ただし証拠がないと不利になる可能性もあるので、できる限り事前に「肉体関係を示す証拠」を集めておきましょう。
今回は夫や妻に不倫(浮気、不貞)された方が離婚調停を申し立てる方法や注意点をお伝えします。
配偶者に不倫されてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
1.不倫を理由とした離婚調停の件数
不倫を理由に離婚調停を申し立てる人はどのくらいいるのでしょうか?
裁判所の司法統計資料によると、令和2年に「異性関係」を理由に離婚調停を申し立てた人は「夫側」が2,132件、「妻側」が6.505件です。
離婚調停の全体件数としては夫側からの申立が15,500件、妻側からの申立が43,469件となっています。そこで「割合」でみると、夫側の申立のうち13.7%、妻側の申立のうち14.9%が異性関係(不倫、浮気など)を理由としたものといえます。
順位でみると、夫側の申立のうち「異性関係」は「性格が合わない」「精神的に虐待する」に次いで3番目に多数となっています。妻側の場合、「性格が合わない」が1位、「生活費を渡さない」が2位、「精神的に虐待する」が3位、「暴力を振るう」が4位となっており、異性関係は5番目です。
男女ともに「配偶者の不倫(浮気、不貞)」を理由とした離婚調停の件数や割合は多い状況といってよいでしょう。
2.離婚調停と申立理由の関係
離婚調停を申し立てる際には離婚を希望する理由を明らかにする必要があります。ただ調停では訴訟ほど、離婚理由は重要ではありません。調停の場合、どういった理由であっても夫婦が離婚に合意さえすれば離婚が成立するからです。
不倫が理由でも性格の不一致が理由でも「相手が嫌い」といった理由でもかまいません。
場合によっては「自分が不倫していて別の女性と結婚したいから離婚したい」といった事情でも離婚が成立する可能性があります。
2-1.離婚訴訟の場合、法律上の離婚原因がないと離婚できない
離婚調停ではどういった理由であっても同意があれば離婚できますが、訴訟ではそうはいきません。
離婚訴訟で離婚を認めてもらうには「法律上の離婚原因」が必要です。
法律上の離婚原因とは、民法の定める以下の5種類の事情をいいます。
- 相手の不貞(既婚者が配偶者以外の人と肉体関係を持つこと)
- 相手による悪意の遺棄(生活費を払わない、家出する、同居を拒否するなど)
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- その他上記に準じる程度の婚姻関係を継続し難い重大な事由(DVやモラハラなど)
「不貞」は法律上の離婚原因に数えられますが、法律上の「不貞」というためには「肉体関係」が必要です。夫や妻が浮気していても、浮気相手とプラトニックな関係では不貞にならず、離婚請求できないことが多いでしょう。
また離婚原因によって慰謝料請求できるケースとできないケースがあります。
不貞や悪意の遺棄なら慰謝料を請求できる場合がありますが、3年以上の生死不明や回復しがたい精神病の場合には通常、慰謝料は請求できません。
離婚調停を申し立てる際には、万が一不成立で終わった後の「離婚訴訟」も見据えて検討しておきましょう。そのためには,離婚に詳しい弁護士の法律相談を受けるのが良いと思います。
その際には離婚理由や不貞の証拠が重要となってくることを押さえておくべきです。
2-2.話し合いの席では理由を聞かれる
離婚調停では申立ての理由があまり重要ではありませんが、それでも話し合いの最中には離婚理由がクローズアップされるのが一般的です。
調停委員からは「なぜ離婚したいのか」と聞かれますし、答えがなければ「理由がないなら離婚しなくて良いのではないか?」などと説得されてしまう可能性も高まるでしょう。
離婚に向けての決意が固く、希望とおりに離婚や慰謝料請求を行いたいなら「相手の不倫」という離婚理由ははっきりさせておくべきといえます。
3.不倫の証拠がない場合のリスク
不倫を理由として離婚調停を申し立てるとき、不倫の証拠がなくても良いのでしょうか?
離婚調停で離婚を成立させるとき、離婚原因を「証明」まではする必要はありません。証拠がなくても相手が離婚に合意すれば離婚できます。また相手が調停の進行上、不貞を認めて,慰謝料の支払いに応じれば慰謝料も払ってもらえます。その意味では証拠がなくても離婚調停を申し立てられるといえるでしょう。
しかし証拠がないと以下のような不利益が及ぶ可能性があります。
3-1.不倫していない前提で話が進んでしまう
離婚調停の話し合いを仲介するのは調停委員です。
調停委員が離婚の話を進める際「不倫している前提」か「不倫していない前提」かによって方向性が変わってきます。
たとえば「不倫している前提」であれば、相手方に対して慰謝料を払うように説得してくれるでしょう。一方「不倫していない前提」であれば、こちらに対して「慰謝料はあきらめるように」と言ったり「離婚せずに復縁してはどうか?」などと説得してきたりする可能性があります。
証拠があれば不倫された前提で有利に進めることができても、証拠がなかったら流れが不利になってしまうおそれが高まってしまうのです。
3-2.慰謝料を払ってもらえない
離婚調停でも、相手が納得すれば慰謝料を払ってもらえます。
そして相手の不倫を理由に離婚するなら、一定額の慰謝料は払ってもらうべきです。
しかし不倫の証拠がなかったら相手は慰謝料を払わない可能性があるでしょう。
調停委員としても、証拠がないのに相手を強く説得することはできません。結果的に慰謝料を払ってもらえないリスクが高まります。
3-3.納得できない条件で離婚してしまう
相手が不倫しているときに不倫の証拠があれば、調停を有利に運ぶことができます。
慰謝料も請求しやすいですし、子どもの親権も主張しやすいでしょう。
場合によっては財産分与も多めにもらうことが可能です。
一方、証拠がなければ相手も強気で交渉してくるので、こちらの有利になるばかりではありません。対等やそれ以上の強硬な主張をされ、結局不利な条件で応じてしまうケースも多々あります。
離婚調停を有利に運ぶためには事前に不倫の証拠を集めておくべきです。
4.調停前に集めておきたい不倫の証拠
離婚調停前に集めておきたい不倫の証拠は以下のようなものです。
4-1.肉体関係がわかる証拠
基本的には、配偶者と不倫相手の肉体関係がわかる証拠を集めましょう。
法律上の「不貞」という場合「既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」を意味するからです。
肉体関係がないと「不貞」にならないので、訴訟になったら離婚が認められない可能性もあります。離婚できたとしても慰謝料請求は難しくなるでしょう。
たとえば、親しく会話しているだけのLINEは「不貞の証拠」として弱いといえます。不貞行為につき感想を言い合っているLINEであるとか、ラブホテルでの待ち合わせのLINEなどは、「不貞の証拠」としてそれなりに強いといえます。
4-2.不貞で有効な証拠の具体例
不貞を証明するために有効な証拠の具体例を示します。
- 性行為しているときの写真や動画
- 肉体関係を持ったことがわかるLINEやメールなどのメッセージ
- ホテルに宿泊した際の領収証(ただし,二人で宿泊したものが分かるものなど)
- 相手が書いた日記(肉体関係がわかるもの)
- 自認書、不貞を認める会話の録音
- 一夜をともにしたことがわかる探偵の調査報告書
上記のようなものは「肉体関係」をはっきり示すので有効な証拠となります。
4-3.肉体関係が直接わからない証拠の価値
一般的に不倫の証拠集めをしようとすると、肉体関係がはっきりわからないものも多数集まるものです。そういったものも無価値ではありません。多く集めることにより、不倫の事実を補強するための証拠に使えます。たとえば以下のようなものも捨てずに集めましょう。
- クレジットカードの明細書
- 肉体関係が直接わからないLINEやメールなどのメッセージ
- デートしている際の写真や動画
- デートの支払いに使った領収証(映画の半券やチケット類など)
- 交通ICカードの記録
- 相手のスケジュール帳、スケジュールデータなど
- 相手が書いた日記(肉体関係はわからないもの)
証拠集めに迷ったら弁護士までご相談ください。
5.不倫を理由とした離婚調停の申立方法
不倫を理由に離婚調停を申し立てる方法をご説明します。
5-1.管轄の家庭裁判所
離婚調停の管轄は「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」です。相手と別居していて遠方の場合、家庭裁判所も遠方になる可能性があります。
調停は基本的に月1回ペースで開かれ、そのたびに当事者も出席しなければなりません。
遠方で出席が難しい場合、弁護士事務所からの電話調停等を利用してもらえる可能性もあります。
5-2.必要書類
離婚調停の申立てにおける基本的な必要書類は以下のとおりです。
- 調停申立書(自分で作成する)
- 夫婦の戸籍謄本(役所で取得する)
不倫の証拠がある場合、申立の際に添付してもかまいません。調停が始まってから時期を見て提出する方法もあります。
5-3.費用
- 収入印紙代1200円
- 連絡用の郵便切手(千円~数千円程度)
基本費用はこちらのとおりですが、養育費や財産分与を求める場合には収入印紙額が上がります。また遠方の場合などには交通費もかさんできます。
6.有利に離婚調停を進めるポイント
不倫を理由とした離婚調停を有利に進めるには、事前に綿密な準備が必要です。
まずは配偶者と不倫相手との肉体関係を証明できるだけの証拠をしっかり集めましょう。
次に自分がどういった条件で離婚したいのか、考えを整理する必要もあります。
相手による反論も予想した上で、再反論を考えておくのも良いでしょう。
調停申立て前に弁護士へ事前に相談するのが得策です。証拠が足りているかどうか、提示予定の離婚条件が妥当かどうかなどのアドバイスを受けておけば、適切な主張ができて、調停で不利になる可能性は大きく低減できます。
1人で対応するのに不安があれば、弁護士に離婚調停を任せるのが得策です。弁護士がついていれば調停委員を味方に引き入れやすくなり、有利な展開となる可能性も高くなるものです。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では不倫トラブルの解決に力を入れています。相手の不倫に悩んでいる方、浮気問題で離婚調停を申し立てようとされている方は、お気軽にご相談ください。