その昔、弁護士ドットコムで紹介された男女問題記事。
夫が刑務所にいる間、妻が別の男性と同棲……服役で「別居」となった夫婦の関係は?
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刑務所で夫が服役中の場合、夫婦関係はどうなるのでしょうか。服役中に妻が別の男性と同性していたという男性から相談が寄せられました。
男性によると、その時はまだ離婚が成立していなかったとのことです。男性は「浮気」として元妻に慰謝料請求したいと考えています。
逆に、罪を犯して服役している夫に愛想をつかし、離婚したいと考える妻からも相談が複数あります。配偶者が刑務所などで別居をしていた場合、「婚姻関係が破綻していた」といえるのはどのような状態なのでしょうか。
夫が「塀の中」でも離婚は可能なのか、弁護士に聞きました。
●夫が性犯罪で服役していたら…
刑務所で配偶者が服役している場合、「婚姻関係は破綻している」とみなされることはありますか。
「婚姻破綻とは、夫婦が婚姻継続の意思をなくし夫婦として回復する見込みがない場合をいいます。最近は別居をもって破綻とされることが多いですが、単身赴任や介護のための帰省など正当な別居は婚姻破綻にならないと考えられています。これには、服役も含まれます。
刑法上の犯罪等が夫にあった場合、(1)夫婦間の犯罪か、(2)性犯罪か、(3)例えば交通事犯で結果が重大でないものなど軽微な事例かに分かれると思います。
原則として、(1)を除いては直ちに離婚原因にも婚姻破綻にもあたりません。ただし、(2)の場合、『不貞行為』は強制離婚原因でもありますので、服役をもって妻が婚姻継続の意思を放棄していれば婚姻破綻と考えてよいケースが多いと思います。
その他の犯罪一般は、罪名や服役期間によるのではないかと思いますが、長期の服役などは夫婦の助け合う義務を尽くすことができないので離婚原因である『婚姻を継続し難い重大な事由』や婚姻破綻の原因になります。
(3)の場合は弁護士をつけて離婚協議や離婚訴訟を提起している場合は、その後は婚姻破綻したと考えられることが多いでしょう。一般的には、面会の際、応じてもらえないと訴訟を提起する旨を伝え、離婚協議すると離婚に応じてもらえることが多いと聞いています。
服役中でも夫婦共同生活を継続するには、服役中でも定期的に面会をしてもらったり手紙のやりとりをしたり、妻の経済的不安に対する解決手段を与えていたりするなどの事情も考慮されるのではないでしょうか」
●服役中の妻の「浮気」は高額な慰謝料は難しい
では、最初の男性のケースでは、元妻は「浮気」とみなされるのでしょうか?
「最初の男性のケースでは、婚姻中の妻の浮気ですので、婚姻破綻していたかどうかが争点となります。
(3)のようなケースでは離婚手続きに入っていない場合は正当な理由のある別居となりますので慰謝料請求はできる可能性がありますが、夫の服役は夫婦にとっても婚姻の危機ですから婚姻関係は相当毀損していますので弁護士費用の方が高くついてしまう可能性もあります。
最初の男性のケースは罪名、服役年数、前科の有無、生活費を妻に渡していたか、子の福祉への影響の程度など総合判断して、夫婦として回復の見込みがないと判断されます。個別性が強いですので、どうしても納得できないときは弁護士に相談すると良いでしょう。
ただ、夫としても服役期間中に浮気をされるということは夫婦間の信頼関係が相当程度低下し、破綻寸前の状態ともいえると思いますし、服役中の不貞は証拠収集が難しいうえ、請求が認められたとしても離婚慰謝料は低額にとどまる可能性が高いです。
したがいまして、ご質問の元妻は『浮気していた』とみなされ高額な慰謝料を負わせることは難しいというのが回答となります」
●服役している夫に離婚を申し出ても応じなかったら?
服役している夫と離婚したい妻には、どのような手段があるのでしょうか。
「離婚する場合、刑務所での面会の際に協議離婚の申出をすることが多いように思いますが、夫が応じない場合、服役中の夫は離婚調停に出席することが難しいので離婚訴訟になります。
特に、財産分与や慰謝料などの問題がある場合は離婚訴訟を利用しましょう。その場合は、調停を経ることなく離婚訴訟を提起します。
まれにどの刑務所に収監されているか分からないという妻のケースもありますが、被告となるべき夫が刑務所に収容できる場合は、法務省矯正局に弁護士会照会をすることになります。
服役中は離婚訴訟に対応することは困難であることから、欠席裁判になったり、弁護士がつかなかったりして、実質的審理のないまま離婚判決に至るケースもあります。他方、財産分与対象財産が多い場合などは夫側にも弁護士がついて通常の離婚訴訟手続きが進められることが多いでしょう」
上記の点を踏まえると、服役中には効果的な弁護を受けられないという実態からなかなか裁判を提起されると、防御しにくいという問題があります。その意味で、服役中に裁判を起こされた場合については、熱心な両親や兄弟などの支援者がいないと弁護士を仲介のうえ、夫婦関係を維持というのは難しいようにも思われるところです。まさに法律と実態の間をいくものといえるのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
弁護士
愛知県弁護士会所属。名古屋市の弁護士。離婚、男女問題、相続、少年付添など家族の問題に詳しく、数多くの訴訟や示談の経験を持つ。
事務所名:名古屋駅ヒラソル法律事務所
事務所URL:https://rikonweb.com/